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2001年1月

配管用保温材の結露実験
(24時間空調用冷水配管の防露)

三菱化学(株) 筑波研究所  鈴木 修
三菱化学フォームプラスティック(株)小浦 孝次

1.はじめに

 従来、空調用配管は温水配管か、冷水配管の場合は日中のみ或いは一定期間の運転のみを想定して設計されてきた。近年インターネットをはじめ情報通信技術の世界的発達により近年24時間稼動のビルが増加の傾向にある。さらに情報端末等の発熱により室内負荷が増大する事から季節を問わず冷房するといった場合が増えてきた。一方、日本の気候は欧米と比較すると高温多湿で特に梅雨時や夏の朝方には湿度90%を超すことが多いため24時間空調用冷水配管の結露事故が増加の傾向にあるとの指摘もある。

 そこで冷水配管における内部結露と表面結露の関係を明らかとするため、鉱物繊維系保温筒としてグラスウール(GW)、発泡樹脂系保温筒としてビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)を用いて、防湿層欠損の影響についてモデル実験で検討した。さらに、特に欠損が発生しやすいと考えられる支持具近傍の結露状況と支持具形状についても検討した。

 

2.東京の気候と理論的防露厚

 平成九年版建設省官庁営繕部監修機械設備共通仕様書*1によると冷水配管の防露厚は、管径200Aまでは40mmとなっている。これは、表面熱伝達率8W/m2K、気温30℃、相対湿度85% 冷水温度5℃時の理論計算結果が

グラスウール保温筒

34mm

ロックウール保温筒

34mm

ビーズ法ポリスチレンフォーム保温筒3号品

36mm

となることから、今までの経験も加味して決定されたと予想される。
 しかしながら、東京管区気象台の地上気象観測毎時月表(平成11年 7月〜8月)を見ると相対湿度が、99%観測値7時間も含めて90%以上の時間が2ヶ月で189時間も観測されている(表1)。この傾向は実測した埼玉県浦和市、愛媛県松山市も同様であった。また徳島県阿南市の海岸線では相対湿度100%の観測値が長時間記録されていた。

 相対湿度が90%を超した場合の理論的防露厚は85%の場合と比較し各段に厚くする必要がある。表面結露防止のため必要な断熱材厚の計算結果を表2に示す。この結果から配管表面に風の当たらない無風状態(表面熱伝達率5W/m2K)では計算上、防露施工されている殆どの配管系で表面結露が発生することになる。

 しかし、冷水配管の結露事故の原因が表面結露によるものだとすると、すべての配管において発生してしまうことになり、単なる表面結露だけが原因とは考えられない。実際に、結露事故発生の多くは、壁・床の貫通部で必要な保温厚が確保できなかった場合をのぞくと、バルブ・フランジ部等の様に異形部との接合部や断熱支持具等の様に防湿層の連続施工が困難な部位での事例が多いと言われている。そこで、筆者らは防湿層施工不良による内部結露により、保温材の断熱性能が低下し、そのために発生する表面結露が結露事故の原因ではないかと予想し、実験を行った。

表1.相対湿度90%以上の観測累計時間と理論防露厚

七月の累計時間
八月の累計時間
理論防露厚
備 考

相対湿度90以上

141時間

48時間

71mm

表面結露発生開始

相対湿度95以上

71時間

16時間

181mm

殆ど表面結露発生


観測値


理論防露厚

東京管区気象台 平成11年7月〜8月 地上気象観測毎時月表より      
この間の気温20〜27℃

配管  鋼管200A   冷水温度5℃
保温材 ビーズ法ポリスチレンフォーム保温筒3号品
表面熱伝達率5 W/m2・K(無風状態)
相対湿度90以上は90% 95以上は95% 外気温度25℃
で計算して求めた。

 

3.含水による保温材の熱伝導率の変化

 結露水にさらされた断熱材の断熱性能変化を測定する目的で、霧吹きによりグラスウールおよびビーズ法ポリスチレンフォーム保温材の表面に散水し重量および熱伝導率の変化を実測した。(表2)

表2.含水による保温材の熱伝導率の変化
品 種
密度
kg/m3
気乾状態
30g散水
40g散水
60g散水
ビーズ法
ポリスチレンフォーム
保温筒
3号品
25以上
0.032W/mK
0.032W/mK

重量増加無し
0.032W/mK

重量増加無し
0.032W/mK

重量増加無し
グラスウール
保温板
40kg
40以上
0.032W/mK
0.104W/mK
54wt%含水
0.114W/mK
74wt%含水
0.129W/mK
109wt%含水

*測定方法 JIS A 1412 平板熱流計法 二枚熱流計方式による
  低温部5℃  高温部35℃  平均温度20℃
* 霧吹きにてサンプル上面より各重量の水を散布し、1時間放置後表面の水分をふき取って重量及び熱伝導率を実測した。

 川田の報告*2と同じく、発泡プラスチック系保温筒(ビーズ法ポリスチレンフォーム)では、重量増加がおこらず当然熱伝導率の変化もみられなかった。一方、鉱物繊維系保温筒(グラスウール)では、散水により速やかに含水し重量増加をおこし熱伝導率も上昇した。特に気乾状態と30g散水時の熱伝導率の差と、30g散水から60g散水における差を比べると前者の方が大きく、少量の含水による熱伝導率の変化が重要な意味を持つことが判明した。

 

4.防湿層欠陥による結露実験

 防湿層欠損の有り無しでの断熱性能変化を見る目的で実験を行った。実験装置は環境試験室と冷水循環装置(写真1.)を用い、試験室内に呼び径50Aの鋼管製"コ"の字型の配管(写真2.)を敷設した。

 保温材としてビーズ法ポリスチレンフォームおよびグラスウールを施工した。 防湿層欠陥を全く作らず試験室内温度30〜35℃、相対湿度60〜100%冷水温度0〜7℃で3週間実験を継続させた。いずれの断熱材も配管と保温材界面の結露センサーが冷水を流し初めて数時間以内で作動した。これは保温材内部空隙に存在する水分が結露し配管表面に集積されるためと考えられる。しかし、その後はどの系も結露水の増大、内部結露の拡大はみられなかった。
 さらに表面熱伝達抵抗の違いを見るために配管の廻りをポリプロピレンの板で蔽い直接風の当たらない環境(無風状態)で1週間測定した。無風状態にすると有風時では発生しなかった表面結露が起こった。これは無風時には、風や対流による表面熱伝達が阻害され表面熱伝達率が低下したためであると考えられる。しかし、防湿層が完全に施工されているといずれの系も内部結露の悪化はみられず、表面結露水も大量に発生することはなかった。この事から防湿層の連続性が非常に重要であることが分かる。
 しかしながら、実際の施工現場において防湿層を欠損無く施工することは困難である。そこで写真3.写真5.のように100×100mmの防湿層の欠陥を保温筒表面に作り試験を行った。その際、欠損部は保温筒接合部に設けた。試験室内温度35℃、相対湿度85〜100%、冷水温度0℃、室内無風状態で1週間放置した後の、赤外線写真を写真4、6に示す。赤外線写真は、アルミ防湿テープの反射による影響を回避するために、アルミ防湿テープを除いた状態で撮影した。
 防湿層に欠損を設けることにより表面結露の状況には大きな差が観察された。興味深いことにビーズ法ポリスチレンフォームでは保温筒接合部に若干の断熱性能の低下がみられるものの、表面結露の増大にはつながらなかった。一方、グラスウールでは保温材下部に結露水が溜まり温度低下が著しく、特に結露水の溜まった下部では表面結露も激しく起こった。
 これは3項で実験したようにビーズ法ポリスチレンフォームでは吸水し難く、断熱性能の低下が小さいが、グラスウールでは速やかに吸水し少量の水分でも断熱性能が低下するため防湿層表面温度が低下し表面結露が発生したと考えられる。又、グラスウール内では内部結露水が配管軸方向にも移動できるため防湿層欠損から離れた部位まで影響が及んだ為と考えられる。

 

5. 配管用断熱支持具廻りの結露実験

 前項では大きな面積で防湿層の欠損が発生した場合の実験であったが、実施工では細い隙間のような欠損の発生が多いと考えられる。そこで特に防湿層の欠陥の起こり易いと考えられる配管用断熱支持具近傍での結露発生状況を観察するため実験を行った。配管用保温材2種(グラスウール、ビーズ法ポリスチレンフォーム)、配管用断熱支持具2種{一般的な支持具(硬質ウレタンフォーム製)、防湿層連続性を考慮した支持具(ビーズ法ポリスチレンフォーム製)}を用い4種類の組み合わせを実験した。(写真7.)

 まず注意深く施工された例として保温材と断熱支持具を密接に押しつけるように接続し、防湿層も丁寧に施工した。施工の際、防湿層連続性を考慮された支持具では保温材外周径と支持具接合部外周が一致するため防湿テープの使用により容易に防湿層の連続化を図ることが出来た。一方、一般的な支持具の場合、支持具上部、側面は連続させることが出来たが、下部では支持台があるため伸縮性のない防湿テープでは連続施工することが困難で防湿層欠損を防止することが困難であった。施工後、試験室内温度35℃、相対湿度75〜80%、冷水温度5℃、室内平均風速1m/sの状態に固定し1週間放置した。
 予想に反し、どの系も内部結露の進展は見られなかった。先の欠損を考慮した実験では防湿層の連続性が確保できないと、特に繊維系断熱材の場合断熱性能の低下が著しかったが、本実験では支持具下部での防湿層の連続性が確保されていないにも関わらず、大きな断熱性能の低下は観察されなかった。これは支持具に保温材を押しつけているため保温材がつぶれ、保温材外周の防湿層が支持具と密着しているため湿度の流入を防いでいると考えられる。
 そこで保温材と断熱支持具の間に5mmの断熱欠損を設け防湿層はできるだけ連続させた(写真8)。前実験と同様、一般的な支持具の系"写真10〜13"では支持具下部の防湿層の連続性を確保することは困難であった。更に試験室内環境を一定条件だけではなく図1.のように温度35℃、相対湿度75〜80%、と温度25℃、相対湿度95〜100%(保温材表面に表面結露発生)に4時間サイクルで変化させた。温度センサーは写真10のように支持具との接合面から水平距離で 10、100、300mm 保温厚の1/2の位置に設置した。

  

 

 

 

 その結果、ビーズ法ポリスチレンフォーム保温材を使用し、連続性を考慮された支持具との接合の場合、図2.に示すように全く温度低下は観察されなかった。又、一般的な支持具との接合部では断熱欠損内部での結露は観察されたが、周囲の断熱性能の低下は測定されず、いずれの支持具を使用した場合も表面結露の増大は見られなかった。
 一方、グラスウールとの組み合わせでは、連続性を考慮された支持具の場合断熱欠損があっても防湿層の連続性が確保されるため断熱性能の低下、表面結露の増大共に観察されなかったが、一般的な支持具との組み合わせのみ変化が見られた。図3.に示すように8サイクル経過した時点(32時間後)よりグラスウールとウレタン支持具の接合部から10mm地点で内部結露の進展により温度低下を開始し、以後しだいに悪化するとともに写真11のように保温材下部に大きな表面結露を起こした。
 現実に発生しうる気象条件を想定し、温度・湿度を変動させたサイクル試験において、わずかな防湿と断熱の両欠損が存在した場合、定常条件の場合よりはるかに短時間で内部結露が発生することは、驚くべき現象である。今後、このような現象についてさらなる検証を行う必要がある。

 

 

6.まとめ

 以上のように短時間での検証ではあるが、冷水配管における結露事故の原因として、防湿層欠損部より内部に水蒸気が進入し内部結露が発生することにより保温筒の断熱性能が低下し局部的な表面結露を増大させる可能性があることが判明した。そして、その傾向は鉱物繊維系保温筒において顕著であり、特に断熱施工、防湿施工の両欠損が存在した場合、それぞれの欠損が小さな物でも欠損面積よりも広範囲に影響を及ぼすことが判明した。又、日格差のように温湿度が変化する条件では短時間で表面結露の増大が起きる事が判明した。
 その対策として防湿層の施工時に欠損を発生しない様に施工すること、施工しにくい部位では防湿層の連続性を考慮した部材を用いることが必要であることが分かった。更に、透湿係数が低く、含水速度の遅い発泡樹脂系保温筒を使用することにより、内部結露に起因する表面結露の増大を押さえることが出来た。

*1  建設大臣官房官庁営繕部監修 平成9年版機械設備共通仕様書
*2  川田 清     建材試験情報10 '79 "建築材料の熱定数"


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